Kengo Makimoto のすべての投稿

グローバル時代に求められる力

先回は、今後注目されるトピックを指摘しました。
同時に、プロセスの重要性が増すこととプロセスを支える人的資源がいかに肝要かにも言及しました。

今回は、グローバル時代に求められる力について考えてみたいと思います。

従来から日本の強みと言われてきたチームワーク(協調性)は、グローバル競争時代に大きな強みであることも例証されつつあります。
大競争時代を生き残るカギは、大協調がいかに早く達成できるかだからです。
言い換えれば、強力なアライアンスを組成し、効果を高めていけるかどうかです。
安倍首相の地球儀外交などは、その意識を具現化し、メッセージとしてもグローバルアライアンスの重要性を強く感じさせるものです。
地球規模の社会課題は地球規模で解決すべきとのメッセージだと言えるでしょう。

この点は、産業界での近年の歩みでも例証されています。
例えば、PC時代を招来したマイクロソフト社とインテル社が密接にアライアンス的行動で市場を席巻できた20世紀終盤での展開を見れば明らかです。
競走の熾烈な航空業界などもアライアンスをどう組成し、効果的なものにしていくかが問われています。
最近では、個の力の面でも、宇宙飛行士のグローバルチームのリーダーとして若田氏が起用された点なども顕著な例となります。
協調性を中心に据えた力が求められる環境で、単なるプレイヤーではなく、リーダーとしてのグローバルな存在感が出てきていると言えるでしょう。

加えて、従来弱いと言われていた構想力も格段に向上して、世界をリードする力になってきています。
例えば、新エネルギー(つまり再生エネルギー)の国際協調グリッド構想でアジア地域を包含するようなビジョンは、いずれも日本発となっています。

一つは、自然エネルギー財団の提唱しているアジアスーパーグリッドによる国際連系構想です。
自然エネルギー財団は、ゴビ砂漠(モンゴル)に再生エネルギープラントを構築して、モンゴルは勿論、ロシア、中国、韓国、日本(北海道稚内ルート)へと続く、日本の北側からエネルギー供給をしていき、エネルギー需給のバランスをとっていこうと考えています。

アジアの南側からエネルギー供給と需給バランスの調整を構想しているのが、日本創生会議です。アジア大洋州電力網として提唱されています。

こうした壮大な構想が打ち出され、グローバルな社会課題に対して、課題先進国としての日本がイニシアチブを執ろうとしている姿勢は注目に値します。

今後、ますます必要になってくる力が、議論力です。
協調性と構想力を実現していくためには、議論する力、知恵を創出する力が必要になります。
そのプロセスで、どれだけ大きな協調を創出できるかが決まります。

構想を推進するかどうかという非建設的な議論ではなく、構想を実現する為に何が必要か、それはどれほど重要かについて徹底的且つ迅速に熟議(熟考と議論を徹底すること)していくことが必要なのです。
つまり建設的な議論を展開していくことが肝要です。

建設的な議論を展開するからこそリスクを考慮すべきだという観点に立ち、進んでいくことがグローバル潮流を形成することになります。
「リスクがあるから行わない」は、リスクマネジメントの意味を無くし、成熟度を低めるものとなるでしょう。
行うかどうかではなく、いかに行えるか、実現できるかを考えていく議論力、積極的な議論力が求められています。

実際に各財団や団体が積極的に議論の場を設定して推進しようとしています。
様々な社会課題に対して志高く考察し、議論力を高めていくこと、これこそグローバル時代に求められる力だと痛感しています。
組織だけでなく、個人としても議論力を磨いておくことは、益々、価値を増していくものと考えます。
積極的な方向性を持った議論力は、ステークホルダーから協調性を引き出し、一体感を高めて壮大な構想を実現する知恵を生み出すエンジンだからです。

2020年に向かっての潮流と注目ポイント(2014年1月)

2014年がスタートしました。
日本では、早くも東日本大震災から3年が経過しようとしています。
世界ではSustainability(持続可能性)がテーマに進展しています。

昨年は東京で2020年のオリンピック開催やアベノミクス効果が大企業から浸透しつつあるという経済的には明るい進展もありました。
日本全体への経済効果や浸透はこれからというところですが、少なくともプラス要素が加わったことで、デフレ脱却等の目標も射程に入ってきた状況になっています。
今後の展開がどうなるのか注目していきたいと思います。
特に国民社会への対話という観点では、小泉政権の時には、新たな規制緩和等を実行して改革を遂げていく際に、「痛み」について国民に覚悟させるメッセージが社会に対して頻繁に発信されていたことが改革に伴うデメリットを乗り越えていく力になったと考えます。
対照的に現時点で安倍政権から変革(消費税増税やインフレターゲット政策は小泉政権時代の改革以上の変革を意味すると考えられる)に伴う「痛み」についてのメッセージはさほど多くないのが懸念されます。
小泉政権時代以上に変革を強いられる状況の中で、強気一辺倒、明るい話ばかりが強調されると、社会一般の感覚とズレが生じてしまい、却って変革にブレーキがかかってしまう要因になることでしょう。
国内経済と社会動向については、今後の政府の舵取りに注目が集まります。

さて、2020年の東京オリンピックを一つの大きなマイルストーン(里程標)と設定した場合、マクロ的な視点で押さえておくべきポイントを列挙しておきたいと思います。きっとグローバル社会の潮流を形成するであろうと現時点で考えられる点です。

①国連グローバルコンパクト本部から発表されている Architects of a better world (「Post-2015 Business engagement Architectureの構築」)の進展

②国連グローバルコンパクトとも深い関連のあるISO26000の進展 (Social Responsibility)

③ISO20121(サプライチェーンCSRの観点)の進展・・・特に東京五輪に向けて

④ISO13053(定量的プロセス改善手法シックスシグマ)の進展

⑤ヘルスケア、航空宇宙開発、スーパーコンピュータ開発など最先端技術分野での進展

①~⑤に共通しているのはプロセス重視の潮流です。
特に答えの無い中で、解決策を模索していく上では、プロセスこそ最重要な視点となります。

そして、考え抜かれたプロセスに実質を持たせることができるかどうかは、人的資源の質に依存することになります。
年末年始から国内の話題を集めている食の安全(冷凍食品への異物、農薬混入事件)についても定めらた品質管理プロセスに本当の安心と安全を実現するのは、人ということを浮き彫りにしているのではと感じます。

産業社会の側面から言えば、海外から優秀な人材を言葉と文化の壁を超えて採用する動きが加速するグローバル人事の進展があります。
一方、日本的経営や日本文化(良い意味でも、悪い意味でもガラパゴス状態)を活かした現場の強さ、チームワーク重視、組織能力を重視し高めていく上では、相対的に低コストとなる高学歴では無い人材の育成、活用も日本の国際競争力を高める視点、人材資源をフル活用する視点では重要です。(典型例は昨年、ニートによる新たな企業形態が注目されました。また、視点を採用以外にも広げて人材をフル活用するという点では、ダイバシティの観点から女性役員の登用や、一度何らかの理由で退職、休職している方の職場復帰と活用なども延長線上にあります。)

きっと二者択一ではなく、人材ポートフォリオの組成と運営が重要性をいよいよ増していくことでしょう。産業政策の成否を握る大きなカギと言えます。

そうなると当然のように、人の質、職業倫理感の高い人材の育成がグローバルにも、社会の全層においても実現できるかどうかの国際競争となっていくことでしょう。

少子高齢化に伴う人口の減少や市場の縮小などは大きな課題であり、日本が課題先進国であることは確かですが、日本よりも人口の少ない幾つもの国が国際競争力では高いポジションを取っています。国際的な存在感があります。シンガポール然り、スイス然りです。

大切なことは国際社会の中で、21世紀における日本の存在価値、言い換えれば持ち場(posts of duty)を確立できるかどうかが問われているのではないでしょうか。
産業社会を担う人の質(職業倫理感:Professional responsibility)の向上とプロセスの洗練を念頭に相互に研鑽していけるコミュニティの形成をビジョンとしていきたいと強く感じる今年の年頭です。

今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。