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技術大国ニッポンの盲点

技術大国としての自信と誇りを確たるものにしていたニッポン。 ところが地震、津波、原発事故の三重災害に脆くも自信と誇りが消失しています。

どこに盲点があったのでしょうか?

報道で必ず耳にする弁明のキーワードにその点が如実に表現されています。

それは、「想定外でした」の一言です。

ここに技術大国ニッポンの慢心を見て取れます。

つまり、技術のパフォーマンス発揮のシーンは以下の3つになるのですが、  3つ目の想定が考え尽くされていなかったということです。    1.平常時    2.緊急時(想定内)    3.緊急時(想定外)

ニッポンの技術とその運用は、平常時と想定内の緊急時には、これまでも十分機能してきました。  地震発生時に電車が自動停止するシステムなどが典型です。

しかし、想定外の緊急事態が発生したときの弱さ、脆さは目を覆いたくなるばかりです。

仙台空港の一昨日の復旧はとても喜ばしいことでしたが、米軍のパラシュートによる初動アプローチは鮮やかでした。

原発事故の中で、活躍している無人ロボットは米国製でした。

また、空中の放射能を測定する航空機を出動させましたが、米国製です。

想定外緊急時には、ルールやガイドラインではなく、そのベースとなった原則(論)をどれほど組織と個々人が理解しているかが試されるのです。 その点で米国軍の救援部隊の戦略、作戦行動は見事でした。  同じことはイスラエル医療チームの南三陸町における活動でも顕著でした。

原則に基づく創造的発想こそ想定外緊急時に求められるものです。

私たち日本人は謙虚になり、この点で学ぶことが実に多いことに気付きます。

2010年1月12日に発生したハイチ地震は、日本の10倍の死者を記録しただけでなく、首都直下型のため、首都が崩壊しました。

しかし、隣国ドミニカ共和国はじめ米国等の力強い支援を柔軟に受け入れたことにより復旧に弾みがつきました。勿論、スケールが空前であったため今も継続的な救援活動が続いていることは言うまでもありません。それでも首都が崩壊したにも関わらず、復興に向けて一歩づつ漸進しています。

もし、ハイチのような状況が日本で発生していたら・・・と思うと、今から柔軟で、原則に基づく思考と 創造的発想をしっかりと習得しておく必要性が、グローバル化時代に必須であることを痛感します。 リスク管理において如何にこの力が必要か、想定外リスクに対しても立ち向かえる力を身につけて  この試練・苦境から脱していきたいと思います。

復興の足取りを刻む時には、一回りも二周りも力強くなった姿でありたいと願っています。

復興ビジョンのポイント

復興ビジョンを考慮していく上でのポイントを考慮してみたいと思います。

一つは資金です。計画避難者の方をはじめ、被災者の方々は、生活や事業再興のために
資金を必要としています。一方で、義援金は過去最大のスケールであるにも関わらず、様々な補償金と併せても不足するのではと考えられている状態です。

限られた資金のため、被災者への配分に関しても慎重を期しています。

国内の状況を見ると資金が不足との感が否めないのですが、一方、グローバル(世界)という見地
から考えるとどうでしょうか?

ヨーロッパ各国で連鎖的に生じているソブリンリスクの対応や、現在生じている様々な金融危機のきっかけとなったリーマンショックへの対応等で、金融緩和が進み、資金が溢れている状態です。
量的緩和の結果生じた溢れるほどのマネーは、有望な投資先を探しているのです。

復興ビジョンが量的緩和で発生したマネーの有望な投資先としての魅力を高めるものであれば、
復興プランにおける資金面の目処はつきやすくなることでしょう。また、十分な支援も行いやすく
なることでしょう。

ですから、救援活動に注力すことと並行して魅力的な復興ビジョン、世界中の人が救済ではなく、
投資先として考えられるようなエリアを目指すことが肝要です。

また、各国の様々な機関からの支援を通してグローバルに貴重なネットワークが広がりました。
復興ビジョンは、受けた支援に対する恩返し的な側面を持つと、更に建設的な関係構築と、将来の
共栄に繋がっていくことでしょう。

まさに、次の格言の通りです。
There is more happiness in giving than there is in receiving. (Acts20:35)
(受けることより、与える方がより一層幸福です)

危機管理におけるビジョンの重要性(歴史的根拠)

危機管理に関してビジョンの重要性は何度も繰り返されてきました。
例えば、古代から、周辺諸国の憎しみの的となりやすかったイスラエルにおいて
40年間、繁栄と安定、経済成長を実現した賢人ソロモン王はビジョンの重要性
について次のような言葉を残しています。(聖書(New World Translation)に記録されている言葉から)

Where there is no vision the people go unrestrained. Proverbs 29:18
(ビジョンがなければ人心は離れていく)
復興ビジョンとセットでこそ、逆境や困難を伴う指示に従いやすくなります。

また、期待感を裏切る事態の進展がいかにリスクかについてもソロモン王は言及しています。
Expectation postponed is making the heart sick. Proverbs13:12
(期待がなかなか実現しないと心が病むことになる)
甚大な被害をもたらした震災と余震、それに伴う原発事故の影響、また、物資の不足や将来への不安
のためにPTSD(心的外傷ストレス)になるリスクが極めて高い状況で、期待を政府や企業が裏切るなら深刻な事態になることは古代から賢明な指導者は心得ていたことがわかります。

賢明なリーダーシップの発揮の核にビジョンがあること、
その実現(小さな期待を段階的に実現させていく)に向けてのプロセスが如何に重要かがわかります。

復興ビジョンのヒント

福島原発の事故がレベル7の評価がつくとの報道が衝撃を与えました。
計画避難を、この時点で指示したタイミングと考慮すると、当初の不安払拭の情報提供が
完全に裏目に出てしまった格好です。

今のリーダーシップで展開していると、現在何とか維持できている住民や国民からの信頼が
失墜することになるリスクが極めて高くなっています。

例えば、計画避難することを余儀なくされる方から考えると、ただ危なくなったので、避難しなさい
では、耐えるだけの行動となりモチベーション(動機付け)では、渋々動いてもらう状態が継続する
ことになります。

厳しい行動を強いるのを余儀なくされる状況であればあるほど、希望を持てるような将来への
約束をセットにする必要があります。

希望があるからこそ、厳しい状況に耐えることができ、それを克服することができるのです。
明るい将来への見込み、」期待感が無い状態で、自らに逆境となる行動を強いることは最も
悪いリーダーシップの発揮の仕方です。

計画避難をする方に対しては、将来の復興成果の恩恵を最優先で獲得する権利を保証する等
の明るい将来への見込みが最低限必要です。

復興のビジョンのヒントになるのは、自然災害から復興したケースを探すだけでは不十分です。
史上、稀に見る災害のため、災害復興ケースでお手本になる完全なケースは存在しないのです。
また、自然災害からの復興は、耐えること等がどうしても中心になりがちで夢が少ない特徴もあり
ます。

何も無いところを如何に夢の多い社会にするかという観点から考えてみることができます。
一つの考え方として、ドバイやアブダビ等の都市の発展モデルは参考になります。
砂漠で水も不足する場所だったところに都市を築き、世界中の人、モノ、資本を惹きつけています。
世界中の優秀なデザイナーや建築家、企業がこぞって提案を競うことで、次から次へとランドマーク
が出現するサイクルになっています。

ドバイ危機も、あっという間に乗り越えています。

ドバイなどをモデルに世界中の優良な知恵、知見、アイデア、資本が競っていくような復興ビジョン
環境を設定することが、最も悲惨な事故とその影響を耐える上で、逆境を跳ね返す原動力となる
ことでしょう。そのような復興の成果の恩恵に計画避難の対象になった方々が最優先で与かれる
ようになる枠組みが必要だと考えるのです。

この危機を、国家の信用不安(アイルランド、ギリシャ、ポルトガル等)に至らないようにすることが
最低限、実現すべきことです。

被災地にグローバルの力を!被災地に夢を!と願っています。
復興ビジョンのヒントになれば幸いです。

震災復興を成功させる前提

今、復興ビジョンが大切になってきているタイミングで、復興を成功させる
前提を考えておく必要があります。

以下の点が復興における留意点として浮かび上がります。

(1)日本政府はじめ懸命の救援と復興へ向けての活動が展開されているが、日本政府だけでは限界がある。また、これは日本が主体として復興を推進するとしても、日本だけの力では、復興の成功や円滑な再建は困難。

(2)震災の救援活動を通じてグローバル化の明るい面、心強い面が明確になる。(国際的な支援が自発的に展開された。組織としても、個人としても自発的に支援を行なっている。例えば最近ではイスラエル医療チームによる南三陸町への支援等)

(3)復興国債が発行された場合、既に国債発行残高が約1000兆円という状況であるため、日本
の信用不安が発生する可能性がある。自然災害(原発事故という人災的側面も含む)→金融不安へと繋がるシナリオは復興の大きな障害となる。また、経済的不安を一層加速させることになる。
何としても回避したいシナリオである。

(4)復興における日本のメリットは、イラク等の復興に比較して、政情安定性、社会の成熟性(秩序が維持されていること)が相対的に高いこと。

上記の前提を考察すると復興成功のポイントは、次のようになります。

(1)グローバル(国際的)な支援を活用しながら、復興支援を推進していくこと。

(2)国際社会(特に金融界)で、日本の震災復興ビジョンが魅力的なものになるようにしていくこと。
(国際的な金融界を失望させてはならない)

(3)世界中の英知を結集して未来に繋がる、期待を起こさせるような復興ビジョンこそ肝要。

(4)国際社会を復興のプレイヤーとして積極的に参画できるような道を整えること。

日本は超少子高齢化社会という点で世界の中で課題先進国と考えられていましたが、自然災害リスク+先端技術リスクの点で課題先進国であったことが明確になりました。超少子高齢化社会への対応の前に解決すべき課題が浮上したのです。

課題先進国として(1)世界の注目を集めること、(2)課題解決の面で世界の先導モデルとなること
(3)そのような仕方で世界中から魅力的な存在としての日本となること、が提唱されて久しいですが、少なくとも(1)の面は、実現しています。

今後、(2)、(3)の側面がますます重要になってくることでしょう。
優れたマクロのビジョンが、ミクロ、個人の経済的見通しや生計見通しに繋がっていくゆくのだと感じます。

一日も早い復興を祈っています。

震災復興に向けて

この度の震災で被災された皆様に心より御見舞い申上げます。

1ヶ月が経過し震災復興に向けて、皆で考える局面が到来しているように感じています。
震災そのものは悲痛なもので、多くの友人を東北地方に持つ私にとっても心配が絶えない日々でした。

それでも今、敢えて、前に向かって、東北の未来を構想していくことが肝要です。
どんなビジョンを描くかで、東北地方のみならず、日本や世界の様相を変化させることになることでしょう。グローバルソーシングの時代だからです。

また、国際的に支援をいただいていますから、国際社会に対しても復興の場面で何らかの感謝の
意を示すことができるようにしていく枠組みも考慮すべき大切な点ではないでしょうか。

ビジョンこそ非常に重要な局面になっていると痛感しています。