結果の共有よりも基準の共有

チェンジリーダーに必要なことは、判断結果を共有させることよりも、判断基準を共有すること。マトリックスで言えば、要素の共有ではなく、軸の共有が大切ということを物語るストーリーです。

欧米数カ国が参加したグローバルなローカライズプロジェクトでのことです。各国のそれぞれの特殊事情を考慮しつつも、英語初版仕様は変更はしない方針。でも、各国のいわゆるカスタマイズ要求は交錯し、仕様は膨らむばかり。なんとか自国の便宜を図って、いい物にしたいというのは世の常です。各国の特性や文化的習慣に至るまで、どうしてその要求が生まれたのかを何時間も互いに異文化の人たちに説明されます。

なんと、数えてみると、約700件の課題が宙に浮いていたのです。判断解決スピードよりも、新たな課題が生まれるスピードの方が早い!徐々にプロジェクトは混乱し、誰の目にも目標日付を死守するのが困難に思えてきました。

そこに、やってきたのが体格のいいコンサルタント。半日ほど黙って見ていたかと思うと、おもむろにホワイトボードの前に立って何やら書き始めます。それは、大きな十文字。

横軸にはE。つまり英語仕様を示すライン。縦軸にはT。つまりTIME(時間)です。あくまで最初の方針であった初版の仕様は超えないということを横軸で了解。そして残りは時間で切ってしまおうという考えです。

確かに、議論が進むにつれ当初のゴールが徐々に薄れていました。ですから、今一度ゴールに立ち戻り、それを判断基準として見直そうという考えには誰もが納得です。

残りの半日で、参加者全員がそのマトリックスに700件の課題をマッピングしていきました。互いに持っている特殊事情と思惑のある中で、その短時間に、判断<結果>ではなく、判断<基準>を共有し、
優先順位を明確にできたことは、実にお見事。と言うよりも、それまでどうやっても折り合えなかったのに、誰もが基準を共有している、ショッキングかつ不思議な感動を覚えました。

マトリックスが力を発揮する現場を目の当たりにした初めての経験でした。このときに使われたマトリックスは、今では少し姿を変えて、私自身、課題の優先順位付けマトリックスとして、コンサルティングでよく使っています。

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