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コミットメントとコンプライアンス-参画意識の違い

参画意識が高くなければ、「形だけの追従」か、あるいは「嫌々ながらの追従」を示し、これが抵抗勢力となって表れることになるでしょう。ある意味で、これらの態度は見極めやすいと言えます。チェンジマネジメントで直接的に対峙する課題は、これらの態度であることは間違いありません。

一方で、参画意識が高いと見えるような場合でも、目には微妙な違い、いえ、そうであっても結果としては大きな違いとなって表れる課題があります。それが、コミットメントとコンプライアンスの違いです。コミットメントとは、情熱的参画とでも表現しましょうか。目的の達成に向けて自らエネルギーを注ぎ込み物事を変革してゆこうとする態度です。コンプライアンスとは、応諾とか追従と訳されるように、心から同意して応じますが、あくまで協力の範囲です。

コンプライアンスは、ゲームのルールを守ることで満足しますが、コミットメントはよりよいゲームにするためにルールを変えることすら考える、それほどの違いがあるでしょう。当然ながら、変革に向けて組織が進むためには、コミットメントが必要です。その違いは何でしょうか?

コミットメントが自分のビジョンを持つ、あるいは与えられたビジョンでも自分で意味づけして自分のビジョンにするのに対し、コンプライアンスはビジョンを受け入れますが、それを自分のビジョンにしません。これが改革推進力の大きな違いです。そうであれば、どのようにコンプライアンスからコミットメントのレベルにビジョンを引き上げることができるでしょうか?

まずビジョンには二種類、つまり肯定的(ポジティブ)ビジョンと否定的(ネガティブ)ビジョンがあることを踏まなければなりません。「何を望むのか」が前者であるのに対し、「何を避けたいのか」が後者です。もっと言うと、大志から来たビジョンか、恐怖から来たビジョンかということでしょう。

組織は、その両方のビジョンを持ちえます。そして、危機的状況に直面し、変革の必要性を感じるときは、概して現状回避のモチベーションを持ち否定的ビジョンから始まりがちです。そして、その恐怖から少しでも逃れようとして、先に述べたコンプライアンスが生じるわけです。端的にいえば、仕事を失わないため、評価をよくするため、苦労して仕事しなくてもよいために・・・と考えるわけです。

時に、この否定的ビジョンは短期的には瞬発力となることがあります。しかし、そのビジョンを達成して現状を回避しても、ひとたび恐怖が去れば、組織の変革エネルギーが失われてしまいます。一方、コミットメントは、絶えざる学習と成長をもたらし、変革し続ける力を生み出します。

表面的に協力の精神がみなぎっているので参画意識が高いと思い込んでしまうのではなく、どうすれば、個々のビジョンにできるのかを考え、参画意識を超えて、当事者意識を持てるよう、肯定的ビジョンを明確にし、何のために、何を、どのように行うかを、コンプライアンスを示す人々と真剣に向き合って考えることが必要でしょう。