あるべき姿を妨げる壁を取り除く(2)

To Be思考を妨げる壁を克服する方法を説明します。
今回はその第2の壁。

事例については前回の記事を見てください。

2つ目の壁は「思い込み」です。
先の事例でも、あるべきモデルの思い込みが激しかったため、思考がそこから解き放たれませんでした。
思い込みがあると、物事の反面が見えなくなる傾向があります。

その場合に意識できるのは、あることが達成できるなら、そのために犠牲になるのものは何かを考えます。
たとえば、品質は向上してもスピードが犠牲になるとか、スピードは上がるけどスペースが必要などです。
こういうものを指標化したものをトレードオフ指標と呼びます。

数値で抑えながらあるべき姿を実現性あるものにする手法です。
思いつきや思い込みといった壁を克服する方法の一つとして使えます。
よく指標(KPI)を定めて見直し、改善サイクル(PDCA)を回すなどと言われますが、
トレードオフ指標とは、最初から2つの指標を設定するのです。
かならず、「それって何で測るの?それが上がれば何が下がる?」と考え、反面もTo Beに入れるのです。

また、人は思い込みが激しい生き物で、自説を疑わず、都合のよい情報だけを収集する傾向があります。
数ある情報の中から、仮説を補強し支持する情報だけが目に入るようになります。
「仮説は仮の説」であることを忘れ、真実だと信じ込んでしまい、あるべき姿の論理を固めてしまう・・・。

これは、あるべき姿を描くことが、答え探しではなく、仮説構築作業である以上、常に警戒すべきことです。
仮説という帰納的思考の持つ最大の注意点です。ですから、仮説には検証が不可欠なのです。
その検証の際に、仮説に都合のよい証拠だけを取り上げて、仮説を補強することを、
社会心理学では「確証バイアス」と呼んでいます。

これを避けるために戦略論では、必ず「戦略オプション」を幾つか作り、比較検討するのが常套手段です。
楽観シナリオ、標準シナリオ、悲観シナリオを作るというのも、この壁を乗り越えるためです。

仮説検証で、確証バイアスを克服する助けは、反証です。いわば批判的(クリティカル)に考えてみる。
トヨタのカンバン方式でやれば間違いないといった思い込みが壁となっていれば、たとえば、
中越地震でリケンなどの部品メーカが操業停止し、結局トヨタも工場生産停止に追い込まれた、
などの反証を考えるのです。

そうして上で、果たしてカンバン方式がよいのか、全プロセスに適用する価値はあるか、など思い込みから徐々に人を解き放つ視点が生まれていきます。

もちろん、反証に終始すると、堂々巡りに決着はつきませんから、あくまで検証が大切です。
思い込みの壁にぶち当たってしまったときに、思い起こしましょう。
先の事例の場合、社内力学が働いて反証が十分になされていませんでしたから、
そこから解き放つ必要がありました。
そして、新プロセスを実際に模擬的に試行してみて、数字で検証を重ね、To Beを磨き上げていきました。

—– Lesson Learned —–
思い込みの壁を克服するために・・・
・トレードオフ指標を考えて反面を入れる
・検証と反証により確証バイアスを避ける
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