わからないのか わかりたくないのか

先日、変わらなければいけないというコンセンサスは掛け声としては共有しているものの、なかなか変われないということを悩んでいて、みんなの意識を変革するような講演をしてほしいとの依頼を受けたので、さっそくお話をしてきました。

みなさん、とても熱心にお話を聞いてくださいました。話の中には、陥りがちな思考パターンの例をひとつずつ取り上げて、よくよく考えてみるとそれが如何に不合理かを考えていただくようにしました。特に力を入れたのは、「どのように」思考の束縛から、「なぜ」思考への解放です。

一般に、人は仕事が与えられると、どのようにすればうまくいくかを考えます。それはとても良いことです。たとえば、どうすればもっと早くできるのか、どのように質を向上させることができるか などなど。そのうち、その仕事に熟達すればするほど、いわゆるその「道」なるものができます。それを形式化したのがプログラムやマニュアル。

でも、道を究めれば極めるほど、どうしても、考えなければならないポイントがやってくる。それは、そもそも「なぜ」その仕事をやっているのかという考えです。でも、たいていの場合、決まって抜け落ちているのがこのポイントでもあります。

変わろうとするとき、「どのように」思考の範囲内で考えてしまいます。簡単に言うと、その方が楽だからです。でも、そこで頑張っても、せいぜい”新しい技”を一つ加える程度で、なかなか、「変わる」というレベルの変化が起きません。本当は、「なぜ」それをやっているのかまで考えて、根っこから考える必要があるのに、なかなかそうできないのです。

話の中で、「鎖につながれた象」の寓話をお話ししました。サーカスにいる象は、その大きさや力の割には、小さな鎖でつながれていますが、鎖を断ち切って逃げることくらい簡単なのに、そうしようとしません。なぜでしょうか?象は小さいころから鎖につながれていました。その子どもの象は、必死でもがいて逃げ出そうとするが、鎖は断ち切れなかったのです。子どもの象はやがて自分の無力さを認め、おとなしくなります。この経験学習により、大人になったサーカスの象は小さな鎖から逃げ出すことはできないのです。

これは固定観念の持つ束縛の影響を物語るたとえです。わたしたちにつながれている小さな鎖とは何でしょうか・・・という具合です。その鎖とは、現状の範囲での「どのように」を考えるという鎖です。これをオペレーション思考といいます。小さな鎖を断ち切って、現状の枠を超えて変化を起こすことをイノベーション思考といいます。このためには、「なぜ」思考へと自分を解放する必要があります。

講演ののち、大半の方には好意をもって受け止めていただいたように感じました。でも、最後まで残っておられたひとりの方が近づいてこられました。講演中も少し気になっていた方です。

「今日の話はあっという間でした。いつも森川さんの話はわかりやすいんですけど、実は今日は正直言ってよくわかりませんでした。なんだかもやもやしています・・・」とのこと。

そのとき、思いました。「わからない」のではなくて、「わかりたくない」のでは?ここにも、つながれた小さな鎖があるな~と・・・。人は、こうやって言葉を変えて、自分を鎖につなぐんだな~と。

さて、変革はこれからですね。がんばります。

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