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バンコクの年末年始-もしくは、フラジャイルな世代-について

サワディ・ッカ!

今回、年末年始はバンコクで過ごしました。タイは仏教国ですが、年々クリスマスも賑やかになっているらしく、11月末からツリーが飾られ、12月半 ばころから、店員さんがサンタ服、サンタ帽で働いていました。24日、25日を過ぎても、衣装も飾りつけもそのままで、挨拶だけ、「メーリー・クリスマ ス」から「ハッピー・ニューイヤー」に変わります。まだ年も越してないのに「ハッピー・ニューイヤー」はないだろうと、旬にこだわる日本人(私のことで す)は考えますが、「まだでしょ?」とタイ人に言うと、「マイペンライ、マイペンライ」(まあいいから、いいから)なんていなされてしまいます。「野暮な こと言うなよ」なんて響きがあるのかもしれません。そういうのに慣れてくると、こっちが「野暮天」なのかもしれないなんて気になってくるから不思議です。

11月末からだんだん盛り上がってくる年末年始ですが、やはりピークは大晦日です。数日前から夜になると路上あちこちで宴会が行われ、花火があがり ます。宴会は日本の花見の時の酒宴のよう。飲んで唄って踊って・・・、真夜中まで続きます。大晦日の花火はかなり本格的なもので、日本の夏の花火大会のよ うです。タイ人にとって、クリスマス=大晦日=お正月はまさしく、「盆と正月が一緒に来た」という感じなんでしょう。

「あの花火は誰があげてるの?」「知らない・・・、どこかのお金持ちじゃないの・・・・?」どうも、ほんとうにどこかのお金持ちが自分で勝手に花火 大会をやっちゃうことがあるようです。大晦日だけではなく、自分や奥さんの誕生日なんかにも・・・。そのあたりは日本の感覚ではちょっと理解不能ですね。

正月も10日過ぎくらいになると、年末年始のノリはさすがに衰えてますが、旧正月が終わるまでは、年末年始モードの残像を引きずっているそうで、そ の旧正月がなんと4月のソンクラン(水掛祭り)の時ですから、まあ、足掛け5ヶ月間、年末年始をやってることになります(凄い!)。

東南アジアのラテン系たるタイ人のどこに発散を待っているストレスが溜まっているのかよくわかりませんが、本家ラテン系のブラジル人もカーニバルで大発散するわけですから、人間は息をしているだけで、ストレスが溜まっていくようにできているのでしょう。

日本の場合、もうコミュニティがストレス発散の機会を提供するなどという時代は終わってしまっています。ストレスの内容も、その溜まり方もそれぞれ ですから、発散の仕方も各人が考えなければならないのでしょう。私などは、ストレッサー(ストレス因子)を生きる力に変換する仕方を学ぶことが成長の定義 であったような時代に属する(幸福な)世代に属していますが、時代はそれからずいぶん遠いところに来てしまいました。

多重人格(解離性同一性障害)といえば、以前は、幼児期の性的虐待のような極端な経験がその原因であったわけですが、昨今では、失恋とか上司からの 叱責なんていう普通の経験がその原因となることがあるんだそうです*1)。自分の叱責で部下が多重人格になってしまった、なんて経験はしたくないですね。

日本にはリストカッター(常習的自傷行為者)が700万人いるんだそうです。20代半ばのある女性から最近聞いたんですが、彼女が高校のころでも、 リストカッターはクラスに何人かいて、そういう人を見ても「なんか悩みがあるんだなー」くらいの感想しか持たなかったそうです。それからもう10年弱たっ てるんですから、「いわんや今日(こんにち)においてをや」です。

さて、そういう若者が続々、労働市場に出てきます。そういうフラジャイルな(壊れやすい)世代に、圧迫教育のような手法は通じないでしょう。採用時 にスクリーニングしようとしてもそうは問屋が卸しません。団塊の世代の退場も問題ですが、新しい世代の登場もまた大きな問題です。われわれは、この問題へ の対応というストレッサーを自分の成長機会に、生きる力に変えて行かねばなりません。それが、幸福な時代に成長した先行する世代の責任です。

タイ人のラテン系のノリを横目に、気を引き締めなおしている今日この頃です。ご同輩、Fight!

Love & Work !!

*1)「いまどきの『常識』」香山リカ著、(岩波新書)
TVなどで売れていて、ちょっと軽い感じがする著者(精神分析医)ですが、なかなかどうして、本物です。この本によれば、「いまどきの若者」にとっては、 ロックもラップも反抗の唄ではないんだとか。親や友達や恋人に対する感謝なんかが、一番親しまれる主題なんだそうな・・・・。大学の新入生に尾崎豊の「卒 業」(古いね)を聞かせて感想文を書かせると、「学校の窓ガラスを割るなんて、そういう人に迷惑をかけるようなことをしてはいけない」なんていう作文が 帰ってくるんだそうです。いったい、どうなってるんでしょう。