月別アーカイブ: 2006年5月

映画に関する三都物語

サワディ・カップ!

日本は連休明けですね。タイも4月のソンクラン(水掛祭り)が終わり、5月になって多少、仕事モードになりつつあります。

実は、今月からベース・キャンプ地をタイのバンコクからカンボジアのプノンペンに移しました。ここを起点に、西のベトナム、北上して中国あたりを Watchingし、<働くことの普遍的意味>を考えていこうと思っています。あらためて「チュムリアップ・スオ!」(カンボジア語で「こんにちは」)。

というわけで、しばらくの間、カンボジア事情をお伝えすることになると思いますが、単純にタイとカンボジアを比較するのではつまらないので、補助線 として、ミャンマーと三つ巴で比較してみたいと思います。バンコク、ヤンゴン、プノンペンの三都物語です。手始めに、3つの国の映画事情について書いてみ ましょう。

タイのバンコクでは、ハリウッド映画が人気です。たいていのものは劇場で見られますし、ケーブルTVでもやってます。そして、DVD(ほとんど違法 コピーですが)も売ってます。タイ映画というのもあるようで、私は見ていませんが、国境を越えた市場性を持ったものも作られているようです。

ミャンマー人は映画が大好き。ヤンゴンの街にある映画館の看板には、昔の日本の「日活アクション映画」みたいな感じのポスターがたくさん貼ってあり ます。赤木圭一郎や小林旭みたいな二枚目と浅丘ルリ子みたいな美女、そして宍戸丈みたいな悪役が、いかにもという感じで描かれている懐かしい感じのポス ターです。

映画が始まると、はじめに悪玉が善玉をいじめるシーンがしばらく続きます。すると、お客さんが騒ぎ出す。
「やめろー!」
「ひっこめー!」

その騒ぎが最高潮に達した時、映画は一時中断。映画館のマネージャーが現れて、お客をなだめます。
「まあ、まあ、みなさん、大丈夫ですから。最後には悪人は懲らしめられます。お約束します。だから、観ていてください」、とか何とか・・・・。

するとお客たちは、拍手喝さい。
「よーし、やれー。はやくやれー、続きを観るぞー」、てな具合。

なんだかほほえましいですね。日本でも昔、街頭TVに集まった群衆が、ピンチに陥った力道山をこんな感じで応援したんでしょう。
「あぶなーい。後ろだ、後ろ!」なんて。

日本でこういう光景が見られたのは、「ドリフの全員集合」くらいまででしたね。
「かとちゃん、あぶなーーーい!右、右、右!!!」。

ではカンボジアはどうか。プノンペンにももちろん映画館はあって、しばしばその横を通るのですが、ポスターから察するにそのほとんどはオカルト、な いしホラーもの。土地の人によれば、99%はその種の映画だそうです。時々、違う種類の映画がかかっても、前後の予告編は100%、その種の映画のもの で、選りすぐりのシーンが繰り返しでてくるので、苦手な人は映画館には近づかない。

オカルト、ホラーといっても、ハリウッドや日本のもののように「恐怖で身も凍る」といったようなものではないようです。ポスターを見る限り、ちょっとお笑いが入った、「ナンチャってホラー」みたいな趣があります。でも、カンボジア人には充分怖いのかもしれません。

カンボジアは仏教国ですが、仏教といっても中身は精霊崇拝的な要素が強く、日本の仏教のような思弁的なものではなく、アミニズム的なものです。カン ボジア人は「夢に意味がある」という感覚をもっていて、なにかというと「昨日、かくかくの夢を見たんだけど、どういう意味だと思う?」といった質問をしま す。しかし、それだけでは、映画=オカルト一辺倒の理由付けとしては不十分ですね。

1975年に政権をとったポルポトのクメール・ルージュが行った虐殺。その清算が、まだ終わっていないことの影響があるようにも思います。「怨念」 がプノンペンだけでなく、カンボジア中に渦巻いている、といったような。街並みにもそれは表れています。それについては、また次回ご紹介しましょう。

チュムリアップ・リア(さようなら)!

Love & Work !!