月別アーカイブ: 2011年4月

「困ったことがあったらな、 風に向かって、俺の名前を呼べ」

「困ったことがあったらな、
風に向かって、俺の名前を呼べ」
(車寅次郎、「『男はつらいよ』第43作、寅次郎の休日」より)

“If you have a trouble, call my name to the wind, OK?”

これは寅次郎が甥の満に対して言う台詞です。
叔父と甥という関係はなかなか興味深い。
甥にとって、叔父=親の兄弟という存在は親の権威を相対化する契機として機能します。

叔父の前では父も母も、兄弟=子供になるからです。

叔父と父・母との会話を聞いたり、また叔父と直接に会話したりすることを通して、甥(姪)は父や母にも子供時代があり、父や母もまた祖父や祖父母にとっての子として育ったということを知ります。
そういう認知は大変貴重です。

また、叔父(叔母も)の方でも、自分の子供にとっての親という権威とは違う次元の影響を甥や姪に与える独特なポジションにいるということを自覚しています。
彼(彼女)は、甥(姪)に対して、父(母)性=親性=権威性とは違う次元での大人性=成熟性を、時々のそしてしばしの遭遇の中で現前させねばならない。
これはなかなかのアクロバシーを要請する難題です。

その点、寅さんはよくそれを果たしていたと言えるでしょう。
アッパレ!

人は夫になったり、妻になったり、父になったり、母になったりすることを成長の契機にできますが、叔父になったり、叔母になったりすることをもってそうすることもできるのです。
そういうことが面白い。
ライフサイクルってよくできてますね。

なぜ山に登るのか?

—なぜ山に登るのか?
—帰る家があるから。
(みなみらんぼう)

Why do you climb mountains?
Because there is a home to come back.

みなみらんぼう氏は♪やまぐちさんちのつとむくん♪で有名。
わたしは彼の「コートにスミレを」をいう曲が好きです。

登山家としても知られていています。
還暦にマッターホルンに登ったそうです。

一昨日、車で聞いていたラジオで彼がゲストに出ていました。
その中で、アナウンサーが彼に尋ね、そして彼が答えた。
その言葉が上のものです。

彼はこう続けていました。
「山では山小屋とか、テントとかで寝る。
どうしても睡眠は浅くなる。
家に帰って、温かい布団でぐっすり寝る。
ああ家に帰ってきたなー、と思う。」

「訓練と行動を尊ぶ心」

「訓練と行動を尊ぶ心は、実は、大きな現実への信頼があってはじめてできることである。

現実の中に「論理的なもの」、「正しいもの」が必ずひそんでいることを信頼しきっている証拠なのである。」
(中井英夫、「美学入門」より)

Heartfelt respect for training and action only comes from conviction
that “something logical” and “something right” should exist in the world.

中井さんの名文です。
以下、こう続きます。

「これは大変なことなのである。
自分の肉体を信じ、この世界を信じ、歴史を信じ、人類全体を信じることなのである。

歴史を信じるというか、人類の歴史をよくしなければならないことに、全身を賭ける魂、その清らかな魂、強い魂の、果敢な態度が、その底に大きく横たわっている。」

「レントゲンだって」

「レントゲンだって、やっぱりね
ニッコリ笑って写した方がいいと思うの
だって明るくとれるものその方が」
(車寅次郎、「男はつらいよ」第32作、「口笛を吹く寅次郎」より)

Even when you take an X-ray, I think, it’s better to smile.
Because you can get a brighter picture.

胸のレントゲンをとるのに笑顔を作って見せる。
「チーーズ!」なんてね。
こういう「余分」なことをシステム論的には「冗長性」といいます。
車のハンドルのあそびみたいなものですね。

目的があって、機能があって、冗長性があって、循環的に作ってあるとシステムは持続可能性を獲得します。
というわけで、人生を持続可能なものとするために、次回のレントゲンの時にはニッコリ笑ってみましょう。

「やってみせ、言って聞かせてさせてみて、 ほめてやらねば、人は動かじ」

「やってみせ、言って聞かせてさせてみて、 ほめてやらねば、人は動かじ」
(山本五十六)

この言葉も日本人は大好きですね。
でも、これだけ「人口に膾炙」され続けてもなかなかそのとおりうまくやれる人がいないということは

A:この言葉の含意するところをうまく受け取れていない
B:この言葉が実は真理ではない

のどちらかだということになるでしょう。
まずはAの可能性を探ってみたいですね。

名言の含意するところを深堀するための一つの方法は外国語に翻訳してみるということです。
英語でも中国語でもフランス語でもなんでもいいんですが、まあ昨今なら英語ということになります。

友人の訳です。

1)
How to incite a person to act:
(1) Show an example.
(2) Explain.
(3) Let him do it, and
(4) Commend.

2)
If you want to incite a person to act,
show an example, explain, let him do it, and commend.

サイト上にはこういうのもあったそうです。

3)
Show them, tell them, have them do it, and then praise them;
otherwise, people won’t do anything.

なにか発見はありましたか?

人口に膾炙するーまたは、エジソンのこと

「私は失敗していない。
これではうまくいかないという発見を1万回したのだ。」
(トマス・エジソン)

“I have not failed.
I’ve just found 10,000 ways
that won’t work.”
(Thomas Alva Edison)

エジソンの言葉の中で一番有名な台詞ですね。
こういうのを「人口に膾炙する」(ジンコウニカイシャスル)と言います。

ある言葉が広く知られていて有名な様、のことです。

「人口」は人々の口、そのままですね。
「膾炙」は、「膾」(なます)と「炙」(あぶり=あぶり肉)。
なますとあぶり肉は味が良くて、みんな大好きという意味だそうです。
中国の古詩にあるらしい。

今日は国語の勉強でした。