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「ベートーヴェンは凄い!」‐2

早川です。

先回に引き続いて、「ベートーヴェンは凄い!」についてです。
コンサートの中で、合間合間にプロデューサーの三枝成彰氏が演奏者へのインタビューという形で「ベートーヴェンのどこが凄いか」ということを解説してくれました。

ベートーヴェンのスコアには彼が生きていた時代にはうまく弾けない、吹けない音、フレーズが存在した。
その原因のひとつは当時の楽器(古楽器)の制約。
もうひとつは当時の演奏家の技量上の制約。

前者についてはその後、彼のスコアを演奏できるように楽器が進化した(改良された)。
たとえば、金管や木管の類。

一方、弦楽器などは当時すでに完成されていたので、後者の制約だけがあった。
初演の時、作曲家兼指揮者でもあるベートーヴェン本人に対して当時の演奏家が「こんなの弾けるわけがない」と文句を言ったときの彼の台詞。
「私は100年後の演奏家のために書いている」

ヴァイオリンに関してはパガニーニやサラサーテなどの超絶技法を駆使する演奏家が登場し、彼らが書いたエチュードのおかげで、後のヴァイオリニストはベートーヴェンが100年後の演奏家のために書いたスコアを本当に演奏できるようになった。
8番にはまだヴィオラのパートにその種の難所が残っているし、9番のあるフレーズはコントラバス奏者に言わせると、「演奏できるようになるまでにあと300年はかかる」とのこと。

これらのエピソードはベートーヴェンという人が未完成の楽器のポテンシャルや完成した楽器を奏でる側の演奏家のポテンシャルというものを知り尽くしていたことの証左。
ここまでが三枝さんからの受け売りです。

そうした解説を聞いていて私が思ったのは、彼が音楽の「進歩」や「発展」、ひいては人類の「成長」を本当に信じていたんだなー、ということです。
そういう想いがあって、その先に苦悩があり、それを突き破ったからこそ、彼は世界によきものを積み増し、また新しいものをもたらすことに成功した。

もちろん、何が「進歩」で、何が「発展」で、何か「成長」か、ということに関しては、我々は大いに懐疑的であっていい。
しかし、その、実定化される前の、価値充填される前の、遂行的概念としての価値そのものについてまで懐疑、否定してしまったら我々はどう考えるか以前に、何について考えるかという地点で、はぐれてしまいます。

うーーん、ベートーヴェン、あなたは偉い!!

Love & Work!