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今、バンコクの真ん中では

サワディ・クラップ!

バンコクは4月2日が下院の投票日。連日、タクシン首相の退陣を求めるデモが行われている様子を、バンコクの真ん中で、NHKの国際放送のニュースを通じて見ています。というわけで、生のバンコクは、「それどこの話?」って感じに静かです。

サイアム・パラゴンという東洋一だか、世界一だかの売り場面積を誇るデパートが、そうした騒動のために一時休業しているとのことで、タクシーに乗っ ても、そちらの方面には行ってくれません。そこで街全体の交通量も多少減って、おかげでいつもの渋滞が緩和され、普通の国の普通の渋滞程度になっていると いうのが、変化といえば変化でしょうか。

タクシンさんという人は、警察官からビジネスマンになり、ITビジネスで成功して首相になったという人です。日本で言えば、ソフトバンクの孫さんと 堀江モンを併せたような人物が小泉さんをやってるようなもんです。もし、タクシン退陣となれば、タイ通貨(バーツ)は大きく値を下げるでしょう。

タイの人は、昨今の成長がタクシンさんのおかげであることを重々知っています。野党勢力が選挙ボイコットという手に出て、さすがのタクシンもだいぶ追い詰められているようにも見えますが、では彼の代わりは誰?となると、なかなか名前が挙がりません。そんな感じ。

もともと、タイの人は「貧富の差に鷹揚」で、貧しい人もお金持ちの生活をねたんだりしない傾向を持っています。「いい思いをしている人は、前世の功 徳のおかげでそうなってる。だから、ひがんだり、うらやんだりするより、自分も現世で功徳を積む方がいい。」そんな感じの、ある種のポジティブ・シンキン グが、そうした鷹揚さの背後にあるんだと思います。だからタクシンの成功談もこれまではねたみの対象にはこなかったんでしょう。

植民地支配を経験した周辺国の場合、宗主国と結託した現地の富裕層が国土の大半を所有して、独立後も力を保持し、それがその後の国の成長を妨げてい るというようなことがあります。フィリピンなどが典型ですね*1)。タイは植民地化を免れたので、そのような極端なことがなく、それが「鷹揚さ」を下支え してもきました。でも、タクシンの経済政策のおかけで創出された、いわゆる「中間層」の人々が、むしろそうした「鷹揚さ」を失い、タクシンに異議を申し立 てている。そういう図に見えます。

そんな中、今日は、投票日前日=禁酒日で、酒屋もお酒を売ってくれませんし、飲み屋さんもお休みです。きっと、月曜日の盛り場は大盛り上がりでしょう。というわけで、今はとても静かです。

でも、こういう日々の中で、後で振り返れば「決定的だった」と思えるようななにかが、静かに進行しているのかもしれません。目の前の蝶の小さな羽ば たきが、地球の裏側のまったく次元を異にする出来事とかすかに繋がっている、というような考え方があります。そうだとすれば、タイのバンコクのこの喧騒の 中の静寂は日本の現実とどこでどのように繋がってるんでしょうか。目を凝らし見、耳を澄まして聞きたいと思います。

Love & Work !!

*1)戦後すぐには、タイから優秀な学生をフィリピンに留学させる、「フィリピンに学べ」運動が盛んだった一時期があるといいます。今では考えられませんね。

PS1:OJTコンサルについての続きを書くつもりでしたが、せっかくこの時期にバンコクにいるので、今回はホットな時事問題がらみの文章にしました。OJTコンサルについては次回以降で。

PS2:でも、3月31日の日経に載った「新生銀行のCLO」の記事についてのコメントも書きたいし・・・・。http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060331AT2C3003N30032006.html