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「OJTコンサル」って何?

サワディ・カップ!配信が一回スキップしてしまいました。ごめんなさい。東京での仕事のために一時帰国をしていて、PCの前に座っている時間がなかったものですから・・・。で、BKKに戻り、久々の執筆活動(?)です。

前回は、<インサイト=INSIGHT + INCITE>という話から、こんなふうに終わりました。「クライアントについてINSIGHTして、クライアントをINCITEする。これは我々の仕事 です。しかし、それを受けて、クライアント(その社員)がお互いをINCITEできるように励ましたい。<お互いの励まし方についての外部からの洞察と励 まし>、これを提供する方法として我々がお勧めしているのがOJTコンサルというものです。What’s OJTコンサル?」

というわけで、今回のお題は<「OJTコンサル」って何?>です。一言で言えば、こうなります。

<「OJTコンサル」とは、
OJT<を>コンサルすることを通して行う
社員の育成コンサルである>

まず、前段から解説させてください。コンサルにはいろいろな形式のものがあります。(情報収集+情報分析)→(戦略立案)→(戦略授与)といった、 対経営者戦略授与型のもの。営業系のコンサルなどによくある、仕組み・仕掛け授与型のもの。生産管理系のコンサルによく見られる、現場主義的な共同作業重 視型のもの。戦略からも業務からも距離を置いた企業文化・風土改善型のもの、などなど。

このうち、現場主義的な共同作業重視型のものは、なにせ現場主義的というくらいですから、当然、OJT型のものになります。ただし、これはOJTを 通してコンサルする=OJT<で>コンサルするものです。それに対して、「OJTコンサル」はあくまでも「OJT<を>コンサル」します。

「OJT<を>コンサル」するわけですから、コンサルが登場する前に、現場がまず「OJT」を行っていなければなりません。我々がそれをコンサルする、それが「OJTコンサル」。分かります?

次に、後段(=「OJTコンサル」とは「社員育成コンサルである」)について。前段が「OJTコンサル」の形式を定義しているのに対して、後段は目 的を定義しています。その目的は、「社員育成」。ですから、OJTコンサルがコンサルするOJTも社員育成を目的とするOJTであるということになります ね。つなげて言えばこうなります。

<「OJTコンサル」とは、
社員育成を目的とするOJT<を>コンサルすることを通して行う
社員育成コンサルである>

うーーん、分かったような分からないような・・・。定義の上での説明というのは、実質がわかった上で読み直すとよくできた説明になっているですが、実質が飲み込めないうちに読むとなんだかよく分からん、というようなことになりがちですね。

では、もう少し実質的に説明しましょう。ある現場が育成OJT=OJTコンサルの現場として選ばれたとしましょう。その現場の上司が当該育成OJT のOJTリーダーで、現場のスタッフがOJTメンバーとなります。コンサルタントは原則としてOJTメンバーにではなく、OJTリーダーにとってのコンサ ルとなります。これがつまり、OJT<で>コンサルするのではなく、OJT<を>コンサルするという由縁です。

育成OJTの現場=OJTコンサルの現場で、初日に次のような宣言をコンサルが行います。

1)これから**から**の間、「育成OJT」を行う

2)このOJTのOJTリーダーは**上司(あるいは複数)である

3)OJTメンバーは、皆さんたちスタッフ自身

4)このOJTの目標は、現場を上司にとっては部下の育成機会、スタッフにとっては成長機会にあふれた場にするための「気づき」を現場にもたらすこと

5)スタッフにとっての「成長」とは、スタッフが「現場の業務を通して当該業務遂行能力を超えた産業人としての普遍的な能力を身に付けていくこと」

6)「成長」のための方法は、「業務に業務それ自体より一段メタレベルの普遍的な課題を持ち込むこと」

7)上司にとっての「育成」とは、スタッフが「業務に業務それ自体より一段メタレベルの普遍的な課題を持ち込むこと」により、「現場の業務を通して当該業務遂行能力を超えた産業人としての普遍的な能力を身に付けること」ができるよう助けること

8)コンサルタントは原則としてOJTリーダーに対するコンサルを行い、OJTメンバーに対する育成活動はOJTリーダー自身が行う

9)コンサルの基本的な活動としては、観察とインタビュー、そしてその結果のフィードバック

10)観察は業務全体、職場の静態観察を含め、業務ミーティング、育成ミーティング(上司とスタッフ間)、インタビューは随時、フィードバックは上司に対してその日ごとに行う

11)OJTメンバーへのコンサルからのインタビューは最小限にとどめるが、必要な場合には上司の許可をとって行う

12)OJTメンバーからのコンサルへの質問も随時受け付ける(ただし、OJTリーダー=上司の許可を受けること)

5)と6)については説明が必要でしょう。ます、5)の「成長」の定義について。「現場の業務を通して当該業務遂行能力を超えた産業人としての普遍 的な能力を身に付けていくこと」というその定義は、このOJTが単なる従来業務のノウハウ継承を目指す以上のものであることを明らかにしています。その企 業がすでに会社の固有のコンピテンシー・モデルを的確に定義している場合はそれにそってコンピテンシーを身につけることが成長目標になるでしょう*1)。 モデルが定義されていない場合には、このOJTそれ自体が、コンピテンシー・モデルの定義とそれへの接近=成長のためのもの、下からの運動のスタートにな ります。

6)の「方法」について。「業務に業務それ自体より一段メタレベルの普遍的な課題を持ち込む」とは例えばこんなようなことです。

例1)会議においてその都度のアジェンダについての議論に参加することが業務であれば、その際に自分やグループの普遍的「会議力」向上について意識しそれを自分自身の「課題」にすること。

例2)火のついた現場の火消しが当面の「業務」であれば、その火消しのプロセスにおいて、火がついた原因とその今後の防止策について、普遍的な水準の見識の蓄積を自分自身の「課題」にすること。

さて、いよいよ育成OJT=OJTコンサルがスタート!期間は1クール=1週間(5営業日)が標準です。早朝、残業時、休日出勤時の現場の様子もお許しがあればモニタリングします。そのような時間帯にこそ見えてくる社員、上司の行動特性というものがあるからです。

さて、スタート時、現場はだいたい半信半疑。「コンサルだかなんだか知らないけど、プロの現場に素人が入ってきて、一週間で何が分かる、何ができ るっていうのか!?」とどなたの顔にも書いてあります。でも、キックオフ時の先ほどの宣言で、ちょっと現場がピリッとする。それを皮切りに、初日の午前中 の最後のフィードバックでガラッと雰囲気が変わります。「えっ、もうこんなに裸になっちゃたの・・・!」って感じ。

なんでそんなふうになるのか?それは次回ということにさせてください。

Love & Work !!

PS:今週末からミャンマーに視察に行きます。その話もいつか書きたいです。

*1)コンピテンシー(COMPETENCY)とは、経営学上は、「特定の仕事・職務において高い業績を上げ続けている人に固有な行動特性」という ふうに定義されています。ですから、コンピテンシー・モデルとは特定の企業がその企業において「高い業績を上げ続けている人に固有な行動特性」を内部的に 抽出して定義、モデル化したものということになります。