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「フラット化する世界」

今、カンボジアはお盆の最中です。9月21日から25日までは官公庁がお休みです。日本大使館からは「パスポートを紛失した場合、パスポート自体の 再発行は可能だが、この期間中は、カンボジアのお役所が休みなので、出国ビザの発行ができないため、出国ができない」旨の注意メールが届きました。

で、期間中の街の様子はというと、カンボジア人(クメール人)にとってはお盆でも、中華系の人たちにはあまり関係ないらしく、中華系の商店(レストランやマッサージ店)などは通常通り営業しています。

でも、さすがにピークの一日だけは街はひっそり。道路はガラガラで、まるで正月のサンガニチの東京都心のよう。しかし、そのほかの日にはそれほどの ヒッソリ感はありません。どうやら、皆が皆田舎に帰るわけではなくて、家で静かにしているだけ人も多いようです。こういうときには皆が一斉に里帰りして日 ごろの喧騒と間逆になってしまうタイのバンコクとはずいぶん違うと感じました。

そんな中で、「フラット化する世界」(トーマス・フリードマン著)を読んでいたら、最貧国をフラット化の恩恵に浴させるためには、貧困者や不法占拠 者に不動産の権利証を与える必要があるという趣旨の文章にあたりました。そうしないと、彼らは自分の住居を守るために家を留守にできない=働きに出かけら れない。

一斉に田舎に帰るバンコク市民と家の中で時を過ごすプノンペン市民。彼らの違いの背景にはそのような事情があるのかもしれない…、なんてことを考え ていたら今度はタイでクーデターがありました。ことの最終的な帰趨は分かりませんが、今のところさしたる混乱はなく、バンコクの新国際空港も無事にオープ ンしそうです。

そうした地政学的リスクについて、フリードマンは「紛争防止の黄金のM型アーチ理論」というのを提唱しています。M型アーチとはマクドナルドのロゴ のことで、その意味するところは、「マクドナルドが出店している国同士は、マクドナルドがその国にできて以来戦争をしたことがない」というものです。

「フラット化する世界」には「マクドナルド理論」のバージョンアップ版が紹介されていています。曰く、「フラット化した世界でのカンバン方式サプラ イチェーンの出現と普及は、マクドナルドに象徴される生活水準の全般的向上よりもずっと地政学的な冒険主義を抑制する効果がある」。

さて、タイは「デルのサプライチェーンの内側」にいる国です。カンボジアには、マクドナルドもケンタッキー・フライドチキンもスターバックスもあり ません。バンコクではクーデターが起こり、プノンペンではクメール・ルージュ時代の虐殺を裁くための国際法廷が開かれようとしています。バンコクではタ イ・バーツが値下がりし(でも暴落はしませんでした)、プノンペンでは現地通貨リエルはドルのお釣りとしてしてか使われていません。

先月までいた台湾について、「フラット化する世界」はこうコメントしています。曰く、「フラットな世界における理想の国は、天然資源をまったく持た ない国なのだ。そうした国は対外内面を掘り起こそうとする。エネルギー資源ではなく、国民-男も女も-のエネルギー、起業家精神、想像力、知能を掘り起こ そうとする。台湾は台風の多い海にある小島で、国民のエネルギーと成功願望と才能を除けば実質的に天然資源はゼロだが、今日では世界三位の外貨準備高を有 している。」

こうした国々をイッタリキタリする生活も一年半になりますが、近頃「本番はこれからだ」という感じが強くなってきました。グローバル化=アメリカ化 =均一化といった文脈とは少しだけヅレたところで、世界のフラット化がどのように進行していくのか、その中で、個人や企業や組織、そして国家がどのように 身を処していくのか。

興味は尽きません。*1)

再見!

Love & Work !!

*1) グローバルアライアンス研究会:
株式会社インサイト・コンサルティングでは、情報システム学会においてグローバルアライアンス研究会に参画し、中国、インド、ベトナムだけではなく、ロシ ア、韓国、南アフリカ、タイ、その他ASEAN諸国における海外技術者の効果的なハンドリングやアライアンスプラニングについて現地情報を交えた研究活動 を実施しています。
http://issj.nuis.jp/
来る2006年12月2日(土曜日)には、情報システム学会第2回発表大会において活動報告が予定されておりますので、関心をお持ちの方は是非ご来場ください。
http://www.isc.senshu-u.ac.jp/ISSJ2006/