「采配」

先日、クライアントの社長から、落合博満氏の「采配」という本についてお話を伺いました。
早速、取り寄せて読んでみました。
すばらしい本でした。
巻頭付近にはこうあります。

「ビジネスマンもプロ野球選手も、仕事を『戦い』や『闘い』にたとえれば、自分のスキルを成熟させながら3つの段階の戦いに直面することになる。
それは、自分、相手、数字だ。
学業を終えて社会に出たら、まずは業種ごとに仕事を覚え、戦力になっていかねばならない。
教わるべきことは教わり、自分で考えるべきことは考え、早く仕事を任せられるだけの力をつけようとしている段階は、<自分との戦い>だ。
(中略)
半人前、一人前になれば、営業職なら外回りをして契約を取る。
それまでに教えられたこと、経験したことを元に成果を上げようとする段階では、どうすれば相手を納得させられるか、信頼を勝ち取れるかなど、<相手のある戦い>に身を置く。
プロ野球選手なら、どれだけ相手に嫌がられる選手になれるかを考えるのだ。
そして、営業成績でトップを取れるような実力をつけたり、職場には欠かせないと思われる存在になれたら、自分自身の中に「もっと効率のいいやり方はないか」、「もっと業績を上げられないか」という欲が生まれる。
現状のままでは評価されなくなるという切迫感、これで力を出し切ったと思われたくないというプライド、さらなる高みを見てみたいという向上心とも向き合いながら、最終段階として<数字と戦う>。」

3つという数字、3つの内容、そして3つの順番、どれをとっても秀逸な論の運び方です。
特にその順番に感じ入りました。

まずは、<自分>と戦う→そして<相手>と戦う→最後に<数字>と戦う。
<自分>と戦ったことがない、戦うつもりのない人(営業マン)が、<相手>(顧客・市場)と向き合うことなどできるわけがない。
<自分>と戦って、<相手>と向き合うことなしに、ただ<数字>(=ノルマ)だけを追いかけている人がそうした数字を達成することはまれだし、仮にたまたま<数字>が作れたとしても、その経験がその人に真の成長をもたらすことはない。
そういうことでしょう。

書名の「采配」が何を意味するか、「誰が何を采配する」ことについて落合さんが語りたかったのかが 巻末付近で明らかにされます。
そのあたりもグッときます。
なによりも、落合さんがプロ野球選手やアスリートだけでなく、一般の産業人、市井の勤め人に深い敬意をもって語りかけ、エールを送っているのだと感じられて。

お勧めです。

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