「インサイト」ってなに?(その2)

サワディ・カップ!今日はタイの祭日。飲み屋街も店を閉めていて、空いている店もアルコールは出しません。こういう日は、大人しく、原稿でも書くに限る。というわけで、先回の続き。

先回は、インサイト=INSIGHT=洞察、ということについて説明させてもらいました。今回は、インサイト=INCITE=鼓舞する、ということのついてです。ちょっと迂遠なところからはじめます。

NHKの看板番組、「プロジェクトX」が終了し、後継番組として「プロフェッショナル-仕事の流儀」が始まりました。人気の看板番組をあえて終わら せた背景には、取り上げるべき「プロジェクト」の枯渇という問題があったと聞きます。仕事に係わるいい話=ネタはたくさんあるのですが、そこで輝いている のはプロジェクトではなく、あくまでソロの個人、そういう話ばかり。そこでもっと個人に注目できるように、番組のコンセプトをシフトさせた。時代を感じさ せるエピソードではあります。

その「プロフェッショナル」で、毎回フューチャーされているプロが、番組の最後に、「プロフェッショナルとは?」という質問に答えます。第一回の 「経営者・星野佳路」曰く、「プロフェッショナルとは常に完璧を目指している」、云々。第二回の「小児心臓外科医・佐野俊二」曰く、「・・・、誇りと責 任」、云々。第三回の「パテシエ・杉野英実」曰く、「永遠の未完成でいたい」、云々。第四回の「アートディレクター・佐藤可士和」曰く、「ハードルが高い ことを超えられる人」、云々。第五回の「弁護士・宇都宮健児」曰く、「徹底的にやっている人」云々*1)。

一流のプロの言葉にしては、「いまいち凡庸」の観が拭えませんが、押しなべて、「他の人にできないことをしている人がプロだ」というような「プロ フェッショナル観」が開陳されているような気がします。まあ、番組のコンセプトからすれば当然のことであって、これからもそういう謂いが重ねられていくで しょう。

なんて、ちょっと皮肉っぽくコメントしたからには、「お前はどう考える?」ということをご披露しなければなりません。プロとは何か?私はこう考えます。

<プロとは、その仕事を自分の成長機会としている人このとである>

他人(ひと)にできないことができることも、他人よりも上手くできることも、必要ない。そんなこといったら、プロなんてホンの少しの一握りの人だけ になってしまう。ちょうど、プロの野球選手の、そのまた大リーグの選手の、そのまた一握りのスター選手がトップ・プロと言われる、そのトップ・プロだけが プロであるというようなプロ観ではないプロ観、それを大切にしたい。どんな分野の、どんなクラスのスタッフでも、自分がその仕事を自分の成長機会を獲得す る場であると思い定めてそれに取り組む限り、その人はその仕事のプロである。そう思います。

で、そういうプロはお互いを励まし合う。なぜなら、それぞれは仕事を自分の成長機会としようとしているのであって、他人(ひと)との競争機会としよ うとしているのではないからです。そして、自分の成長(ゼロサムな<競争>における成長ではなく、プラスサムな<競走>における成長)実感は結局、他人 (ひと)といかに助け合えたかによってもたらされるものだからです。こういう励まし合いのことを英語でINCITEといい、これが弊社の社名=インサイト のもう一つの意味となっているわけです。

とはいえ、これはいわゆる<和>の思想とは異なります。ひところ、よく耳にした業界内のジョークにこういうのがあります。

<クライアントとの初会合の時、社長室に通されて、社長が『和』と記された書を背にして座っていたら、これはアカンと思え>

<和>の場合、そこには<競争>がないだけでなく、<競走>もありません。そこには、内部の論理だけがあって、外部への働きかけがありません。ですから、そこには成長機会の貪欲な発見と活用がありません。そこではむしろ、「出る杭は打たれる」のです。

私の場合、社長室に『和』と掲げられているような会社に対して、次のように提案したことがありました。

<和から愛へ>

<和>と異なり、<愛>には<競争>はなくても、<競走>は存在します。なぜなら、内輪の和を自己目的化することを許さない、外部へのミッションが 存在することがそこでは自覚されているからです。そこには外部が自分たち(=内部)に突きつける<課題>(=Challenge)が常に存在します。そし て、内部(=仲間)はそうした外部からの<課題>に皆で応えることをお互いに助けるために存在するのです。

クライアントについてINSIGHTして、クライアントをINCITEする。これは我々の仕事です。しかし、それを受けて、クライアント(その社 員)がお互いをINCITEできるように励ましたい。<お互いの励まし方についての外部からの洞察と励まし>、これを提供する方法として我々がお勧めして いるのがOJTコンサルというものです*2)。What’s OJTコンサル?これについては、また次回ということにしましょう*3)。コウゴキタイ!

Love & Work !!

*1)これまでの放送分については、次のサイトに、台詞のアーカイブがあります。上記の「云々」の部分をお確かめください。
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/index.html

*2)OJTコンサルについては弊社HPにも若干記載があります。そちらもご覧ください。
http://www.insightcnslt.com/

*3)とはいえ、もしかすると、次回あたり、タイ関連のナゴミネタを入れるかもしれません。そのときは、マイペンライ!

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