Love & Work 2.0(その1) ナセバナルナサネバナラヌナニゴトモ

インサイト・コンサルティングの早川です。

プノンペンでこの原稿を書いています。
弊社のHPのリニューアルにあわせて、メルマガの過去ログをブログの形で公開することにしました。
形式面だけでなく、内容面でも<Love & Work>(1.0)を進化させ、<Love & Work2.0>なる新しいコンセプトを打ち出すことにしました。
2.0のどこがどう新しいのかをご理解いただくために、1.0時代の総括も含め、標記のお題で、しばらく続き物として発信してまいります。
で、今回はその第一回。

バンコク(BKK)でもプノンペン(PNH)でも、CATVでNHKの国際放送を見ることができます。
一つは、外国人向けの「NKHワールド」で、これはほとんどが英語での放送。
もう一つは、外国にいる日本人向けの「NHKワールド・プレミアム」。
これはほとんどが日本語放送で、「大河ドラマ」とか、「ためしてガッテン!」とか、「プロフェッショナル」とか、「その時歴史が動いた」とかいったNKHのカンバン番組を見ることができます(注1)。

で、最近見た「その時歴史が動いた」の中で、「も一度聞きたいあの人の言葉」という特集をやっていました。
過去の放送で取り上げたさまざまな人物の語った名言の人気投票です。
そこで第11位になったのが、上杉鷹山の有名な言葉<ナセバナルナサネバナラヌナニゴトモナラヌハヒトノナサヌナリケリ>です(注2)。

この言葉、しばしばつぎのように表記されます。
<成せば成る、成さねば成らぬ何事も、成らぬは人の成さぬなりけり>
どうやら、鷹山が書いた原典にもそのように表記されているらしい(注3)。
でも、これっておかしいですよね。

<成せば成る>ではトートロジー(同義反復)になってしまって、意味をなしません。
正しくは、<為せば成る>のはずです。
為す、つまり行為する、やってみるということがなければ、成るということはない、成らないのは為すこと、つまりやってみることをしないからだ、これはそういう意味でしょ。
<為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり>

実は武田信玄も似たような言葉を残しています。
時代的にはこちらの方が古いですから、こちらがオリジナルである可能性もあります。
<為せば成る、為さねば成らぬ、成る業を、成らぬと捨つる、人の儚き>(注4)
で、あらためてこの言葉を味わってみましょう。
一般には、「成功のためにはまず行動、行動をおこさない人には成功はありえない」、といった意味で捉えられていると思います。
昔、所ジョージがやっていた宝くじの宣伝に、「買った人しか当たらない!」というのがありましたが、あれと同じです。
「飲んだ人しか効きません」というカゼ薬の宣伝もあったなー(ルル?)
でも、この格言、そんな当たり前のことしか言ってないんでしょか?

成るというのは、自己生成的なプロセスを表しています。
それに対して、為すはその自己生成的プロセスへの積極的な個人の働きかけを指しています。
この言葉は普通、「為す」ことに力点をおいて読まれますが、<起点としての為すことと、自己生成的な成ることの二つの関係>が論じられているところが本当の勘所だと思います。
成せば成るでもなく、為せば為るでもないのです。

丸山真男は有名な講演録「であることと、すること」(私の時代には国語の教科書で習いました)の中で、日本人は「であること」に安住し(保守)、「する」こと(変革)をしない、というふうに言っています。
しかし、「なる」こと(変化)を待つゆえに、「する」こと(変革)をしないという方が正確なような気がします。
「であることと、すること」ではなくて、「なることと、すること」。

確かに、全体はあくまで「なる」のです。
それを個人が「する」=創ることはできない。
しかし、その「なる」全体=自己生成的な全体への個人の働きかけとしての「する」は可能だし、必要である。
だからこそ、ナセバナルということばは、「起点はやはり<為す>ことにある」ということを言っているわけです。

「求めよさらば与えられん」、という聖書の言葉にも同じ意味合いを感じます。
求めるという自力と、与えられるという他力の総合がここにあります。
求めるという行為=為すことが必要です。
それでも結果は与えられる。
結果はしばしば、為す際の意図とずれた、もしくは超えたものとして与えられる-他律的に/自己生成的に。
私はこれを「出来事の過剰性」と言っています。

Love & Work1.0の時点では、この「為す」の部分が「リーダーシップ論」を、「成る」の部分が「学習する組織論」を構成していました(注5)。
では、2.0ではどうなっていくのか、それについては次回以降に。

Love & Work!!

注1:
http://www.nhk-jn.co.jp/wp/index.htm

注2:
http://www.nhk.or.jp/sonotoki/2007_03.html#03

注3:
NKHのサイトにもわざわざこのように注記されています。
「成せば成る 成さねば成らぬ何事も 成らぬは人の成さぬなりけり」
『なせばなる文書』(米沢市上杉博物館蔵)より
*漢字の表記は原文書によりました。」

注4:
これについては次のサイトから学びました。
で、あらためて鷹三の言葉を味わってみましょう。
http://www.tt.rim.or.jp/~rudyard/gohen027.html

注5:
次のアーカイブをご覧ください。
http://www.insightcnslt.com/blog2/

リーダーシップ論については

学習する組織論については

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