「働く幸せ」

「働く幸せ」(大山泰弘著)を読了。

著者は日本化学工業という会社の経営者。
本社は東京都大田区、基幹工場は神奈川県の川崎市にあるチョークメーカーです。
障害者、それも知的障害者を多く雇い入れて成功していることで有名。

川崎工場:47人の社員33人が知的障害者、内22人が重度。
健常者の大半が事務職で、工場で働く健常者は3人だけ。

障害者を一定割合雇用して手続きをすると「最低賃金」の指定解除を受けることができる。
でも、あくまでも「指定解除」を受けずに、「最低賃金」以上の報酬を払いたい。
そのための工夫がかえって工程改善や付加価値の高い商品の開発に繋がっていく。

なにより、障害者が体中で表す「働く幸せ」が、健常者や大山さん自身に伝わってきて、会社中が「働く幸せ」で充ちていく、そのプロセスに泣かされました。

入社したての障害者が、暴れて机をひっくり返し、出来たばかりの製品を壊してしまう。
入社時の約束どおり、社長は本人を家に帰す。
でも、親御さんには「待っている」と伝える。
大山さんはこう言います。

「私たちは待つことに意味があると考えています。
例えば、毎週のように行動障害を起こていた社員が2週間に1回、3週間に1回というふうに、少しづつでも変化しているようであれば、本人が成長したととらえるのです。
(中略)
そして、待ち続けることで、確実に彼らは成長していくのです。
(中略)
何度家に帰されても、会社に戻ってくるKさんの『思い』を大事にしたかった。
私は張り切って仕事をしているKさんの姿を知っています。
実にいい目をしているのです。
(中略)
『息子が、もうしませんから、母さん、社長さんに電話してと泣いて頼んでいます。
なんとかもう一度受け入れていただくわけにはまいりませんでしょうか。』
(中略)
『一緒に頑張っていきましょう。
明日、楽しみにお待ちしています』
(中略)
以前は、誰かが制止するまで暴れ続けていましたが、あるときから、暴れている途中に気づいて、自分の力で止めることが出来るようになりました。
そして、『また、やっちゃった・・・・、ああ、また帰らないといけない・・・』とつぶやくのです。
(中略)
私は、彼の内面の葛藤を想像しました。
自分ではどうにもならない衝動と、働きたいという思い、彼はその両者の間で必死に戦っていたのです。
(中略)
こんな状態が、5~6年ほども続いたでしょうか。
Kさんは次第に落ち着いて仕事に取り組めるようになっていきました。
ついには鎮静剤も不要になりました。
『働きたい』という思いが勝って、彼に『忍耐力』がついていったのでしょう。
自分の抱えているハンディキャップを乗り越えたのです。
(中略)
今も、Kさんは働き続けています。
あんな暴れて、何十回も帰された人とは思えないくらい、表情はとても和やかです。
それどころか、新入社員のめんどうをとても親切にみてあげるほどに成長しました。
あんなに人にやさしく出来るのは、自分が苦しみを潜り抜けてきたからではないかと思います。
周りの社員との関係も親密です。
”嵐”をともに乗り越えたからでしょう。」

Kさん、偉い!
大山さんも偉い!
社員の皆さんも偉い!

私もKさんのように、自分の中の”嵐”と闘って、その「苦しみを潜り抜け」て、「あんなにやさしく」できる人になりたいです。

Love & Work!

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