「私は孤独の中の作業を知っている人かそれに敬意を払う人に向けてしか、この連載を書いていない。
『分かっていない人』を論駁している暇はない。
もう一方の人たちを激励することが今は必要なのだ。」
(保坂和志、「小説、世界の奏でる音楽」より)
もう一方の人たちを激励することが今は必要なのだ。」
(保坂和志、「小説、世界の奏でる音楽」より)
「分かっていない人を論駁している<暇はない>」(キッパリ!)というところがいいですね。
こういう断定的な台詞には日常なかなかお目にかかれません。
でも、この言葉が存外に<温かい>のは、その背後に、「もう一方の人たち」を支援しようとする保坂さんの願いがあることが伝わってくるからでしょう。
私たち一人ひとりは、だれもかれもを励ますことはできません。
自分で自分を励ませる人が、自分で自分を励ませたその同じことで励ますことのできる相手というのは案外少ない。
だからこそ、わたしたちの全員が、誰かしら自分のVoice(こえ)が届きそうな相手に向けて、その誰かを励まそうと努め続けなければならない。
私もまた「孤独の中の作業を知っている人かそれに敬意を払う人」という「もう一方の人たち」を激励することに与したいと思います。