「愛こそすべて」

(ジョン・レノン、「愛こそすべて」全文)

There’s nothing you can do that can’t be done
Nothing you can sing that can’t be sung
Nothing you can say
But you can learn how to play the game
It’s easy

Nothing you can make that can’t be made
No one you can save that can’t be saved
Nothing you can do
But you can learn how to be you in time
It’s easy

Nothing you can know that isn’t known
Nothing you can see that isn’t shown
Nowhere you can be
That isn’t where you’re meant to be
It’s easy

All you need is love
All you need is love
All you need is love, love
Love is all you need

私訳:
こととしてなされえないことできみがなしうることはない
こととして歌われえないことで君が歌うことのことのできることはない
それは語りえないことなんだ
それでもきみはゲームの仕方を学ぶことはできる
いいだろ

こととして行いえないことできみが行いえるものはない
人として救われえない人できみが救いえる人はいない
できないことはできない
それでもきみは自分が時におよんでどうあるべきかを学ぶことはで

きる
そういうことさ

知られていないことできみが知ることはできることはない
開示されていないことできみが理解できることはない
きみが本来いるべき場所でないところにきみが存在しうる場所はない
わかるかい

君に必要なのは愛だ
愛だけが必要なんだ
すべてが愛で
愛がすべてなんだよ

しばらく前ですが、TVでロンドンのロイヤル・ウェディングを見てたら、突然、頭の中で、ビートルズの「愛こそすべて」が鳴りだしました。
そういえば、あの歌詞はなかなか複雑な構文になっていて、以前翻訳を試みて挫折したんだった、と思い出しました。
それで再挑戦。

二重否定を畳み掛けるように連ねた作りになっています。
中身もウィットゲンシュタインを彷彿とさせるような哲学的内容。
その味を損なわないためにあえて「翻訳調」のまま訳してみました。

こうやって訳してみると、レノンのいう「愛」とは、世界や世界と自分との関係のありようについて、それを「受け入れる」態度のことだと分かります。
つまり、「愛こそすべて」という場合の「愛」の対象は、「世界」だということです。
そうだとすれば最後のリフレインはこういうふうに意訳できます。

「君に必要なのはそのような世界のあり方を受け入れることだ
受け入れること、それだけが必要なんだよ
それこそが愛で
その愛ががすべてなんだよ」

「受け入れる」とは、先日のイシグロ=福岡伸一対談の言葉でいえば、「折り合いをつける」でしょうか。
「折り合いをつける」→「受け入れる」→「愛」、と表現はポジティブなものに変わっていきますが、その背後に静謐な諦観が伏流していることに変わりはないでしょう。
そこがまた美しいのですが。

ノーベル文学賞には村上春樹やカズオ・イシグロやBob Dylanなどが最も有力な候補らしいですけど(今年はとれませでしたね)、もしレノンが生きていたら、詩人としての彼も受賞に値すると思います。
いいね、やっぱり・・。

Peace!

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