Zero to One

「Zero to One」(ピーター・ティール著)を読了。

日立さんでの仕事の際に弊社の社員が熱烈に引用していて興味を持ちました。
読んでみてびっくり。

私は常々こう言ってきました。
「日本は資本主義国だということになっているけれど、日本人に資本<主義者>などほとんどいない(まだ会ったことがない)。」

この本を読んで、彼の国にはやはり資本主義者が存在していて、それでもそれは少数者なのだ、ということが分かりました。
単なる資本制生産従事者とイデオロギーとしての資本主義信奉者とでは勝負にならない。
迫力が違いすぎる。

「何かを創造する行為は、それが生まれる瞬間と同じく一度きりしかないし、その結果、全く新しい、誰も見たことがないものが生まれる。」

「他の生き物と違って、人類には奇跡を起こす力がある。
ぼくらはそれを『テクノロジー』と呼ぶ。」

「未来とは、まだ訪れていないすべての瞬間だ。
でも、未来がなぜ大切なのかといえば、それが『まだ訪れていない』からではなく、そのときに『世界が今と違う姿になっている』からだ。」

「マクロレベルの水平的進歩を一言で表すと、『グローバリゼーション』になる。
ある地域で成功したことを他の地域に広げることだ。
中国はこれを国家ぐるみで行い、20年計画で今のアメリカを目指している。
(中略)
ゼロから1を生み出す垂直的な進歩を一言で表すと『テクノロジー』になる。
(中略)
1971年以来、グローバリゼーションは急速に進んだけれど、テクノロジーの進歩はほぼITの分野だけに限られている。」

彼は競争よりも独占(クリエイティブな独占)を目指すことを勧め、事業とは利益ではなくレント(超過利益)を生みだすようなものでなければならないとする。

会社の採用面接で彼が必ず訊く質問。
<賛成する人がほとんどいない、大切な真実とはなんだろう?>

この質問は次のものと等価だ。
<誰も築いていない、価値ある企業とはどんな企業だろう?>

こういう問いに自ら答え、それに挑もうとする者が<ゼロを1にする>ことができる。
と彼は言います。
ね、元気が出るアジテーションでしょ。

しかし、彼のこういう熱い確信は単なる科学信仰や進歩思想のようなお気楽な楽天主義から来ているのではないことが最終章で明らかになります。

これからの世界の未来について彼は4つの可能性を示唆します。
A:繰り返される衰退(循環)
B:プラトー(成熟社会への到達、もしくは世界の再中世化)
C:絶滅
D:テイクオフ

彼の展望はこうです。
「希少な資源をめぐる競争がこれに加わると、世界的な横ばい状態(B)が永遠に続くことは考えられない。
競争圧力を和らげる新たなテクノロジーがなければ停滞(A)から衝突に発展する可能性が高い。
グローバルな規模での衝突が起これば、世界は破滅(C)に向かう。
そうなると残されるのは、僕たちが新たなテクノロジーを生み出し、はるかにいい未来へと向かう、4番目のシナリオ(D)だ。
中でもいちばん劇的なケースが『シンギュラリティ』と呼ばれるもので、これは、現在の自分たちの理解を超えるほどの新しいテクノロジーがもたらす、特異点のことだ。」

「未来が勝手によくなるわけはない。
ということは今僕たちがそれを創らなければならないとういことだ。
宇宙規模のシンギュラリティを達成できるかどうかよりも、僕たちが目の前のチャンスをつかんで仕事と人生において新しいことを行うかどうかの方がよっぽど大切だ。
(中略)
今ぼくたちにできるのは、新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、よりよい未来を創ること―つまりゼロから1を生み出すことだ。
そのための第一歩は、自分の頭で考えることだ。
古代人が初めて世界を見たときのような新鮮さと違和感を持って、あらためて世界をみることで、僕たちは世界を創り直し、未来にそれを残すことができる。」

ホイジンガは「朝の日の影に」のプロローグの中で、「自分はみなが言うようなペシミストではない、むしろオプティミストなのだ」というようなことを謂っています。
その伝で謂えば、ピーター・テールは「オプティミストなんじゃなくて、ペシミスト」だからこそこういう威勢のいい、熱い本を書いたということなんでしょう。

その意気やよし!
彼のアジテーションにしばらく乗って思考してみようと思います。

Thanks Peter!

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